国庫負担金 国庫補助金 直接補助金 間接補助金

碓井光明氏「要説自治体財政・財務法」(学陽書房 1997年)によると、国庫負担金は公共の工事やサービスで、国が分担するのが当然とされるものについて、国が割勘的に経費を分担するものであり、国と自治体との経費分担ないし精算手法である。
一方、国庫補助金は国の施策を行うため特別の必要があると認めるときの奨励的補助金地方公共団体の財政上特別の必要があると認めるときの財政援助補助金に限定される(地方財政法第16条)。
この限定の理由は自治体の活動に対する国の不当な干渉、自治体の他力本願的な財政運営等の弊害を防止することにあるとされる。
国庫負担金は国と自治体の贈与という観念によっては説明できず、特別の金銭給付関係とみられると解されている。
また、国庫負担金の対象となる事務は、地方公共団体が法令に基づいて行わなければならない事務に限られ(地方財政法第10条、第10条の2、第10条の3)、国庫負担金の種目、算定基準、負担割合もまた法律又は政令で定められなければならず(地方財政法第11条)、国庫負担金を除く地方公共団体負担分については原則として基準財政需要額に算入され、地方交付税で措置されることになっている(地方財政法第11条の2)。
国庫負担金が上記のように、精算の手法であることから、事業の確定後、その過不足分の追加交付又は返還の事務が生じる。当該事業が年度末までの事業であった場合は、翌年度に負担金額の確定を行い、翌年度の予算で追加交付又は返還を行うこともある。
一方、国庫補助金は、あくまで、予算の範囲内での単年度の補助であり、翌年度の予算で国が地方公共団体に追加交付する仕組みはない。しかしながら、実際に行った補助事業に要する補助金額よりも多額の交付を地方公共団体が概算で受けた場合には、当該地方公共団体は、翌年度の予算で、余分に交付を受けた額を国に返還する必要も出てくる。
市町村の行う事業に対し、国が補助金を支出する場合に、市町村に対し、直接、補助金を交付する場合と、当該事業に係る補助金を県が市町村に対し交付する場合に、その補助金額の全部又は一部を、国が県に対し、補助金として交付する場合がある。前者を直接補助金、後者を間接補助金と言い習わしているようである。
両者の違いは、下記のようなものと考えていいであろうか。
●直接補助金
市町村は補助金申請、実績報告を国に対し行う。
補助金の返還を要する場合は、市町村が国に対し返還する。
市町村の予算決算に係る補助金の歳入科目は国庫補助金である。
国は市町村に対し、補助金の交付決定を行い、補助金を市町村の預金口座に直接振り込む。ただし、多くの場合、実際には、国は県に、市町村への交付決定の通知を行うことを依頼し、出納長あて補助金の支出をする旨通知をすることが通例のようである。上記の場合、国からの通知を受けた出納長は、市町村からの出納長への請求を受け、国の支出官として、市町村の預金口座に補助金を振り込む。当該補助金は県の歳入歳出にはかかわりない。
●間接補助金
市町村は補助金申請、実績報告を県に対し行う。
県は補助金申請、実績報告を国に対し行う。
補助金の返還を要する場合は、市町村は県に対し返還し、県は国に対し返還する。
市町村の予算決算に係る補助金の歳入科目は県費補助金である。
国は県に対し、補助金の交付決定を行い、補助金を県の預金口座に振り込む。
県は市町村に対し、補助金の交付決定を行い、補助金を市町村の預金口座に振り込む。
県は国から交付される補助金を歳入に計上し、市町村に交付する補助金を歳出に計上する。
国と県との補助金のやり取りと県と市町村との補助金のやり取りは会計上直接には連動しない。