寄附又は補助
民法第416条第2項にいう「当事者」とは債務者のことであり、予見可能性の判断の基準時は債務履行期までであると解されている。(大審院大正7年8月27日判決)
「「寄附又は補助」とは、地方公共団体が反対給付を求めずに公益上の必要性に基いて一方的に行う財政的援助を意味すると解される。一方、貸付は返還を前提として交付される現金給付であるが、有利な条件による貸付金の支出は、「寄附又は補助」に含まれると解すべきである。(中略)(地方自治)法上232条の2は、「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。」と規定しているところ、地方公共団体の長は、地方自治の本旨に沿って、住民の福祉の増進を図るために地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担う地方公共団体の執行機関として、住民の多様な意見及び利益を勘案し、補助の要否についての決定を行うものである。したがって、その決定は、事柄の性質上、諸般の事情を総合的に考慮した上での政策的判断を要するものであるから、公益上の必要性に関する判断に当たっては、補助の要否を決定する地方公共団体の長に一定の裁量権があるものと解される。他方で、法232条の2が地方公共団体による補助金等の交付について公益上の必要性という要件を課した趣旨は、恣意的な補助金の交付によって当該地方公共団体の財政秩序を乱すことを防止することにあると解される以上、地方公共団体の長の裁量権の範囲には一定の客観的限界があり、当該地方公共団体の長による公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があったと認められる場合には、当該補助金の交付は違法と評価されることになるものと解するのが相当である。そして、地方公共団体の長が特定の事業について補助金を交付する際に行った公益上の必要性に関する判断に裁量権の逸脱又は濫用があったか否かは、当該補助金交付の目的、趣旨、効用及び経緯、補助の対象となる事業の目的、性質及び状況、当該地方公共団体の財政の規模及び状況、議会の対応、地方財政に係る諸規範等の諸般の事情を総合的に考慮した上で検討することが必要であると解される。」(岡山地方裁判所平成14年3月13日判決 平成6年(行ウ)第17号 「判例地方自治」239号より引用)