芙蓉旧話の記載事項

「芙蓉旧話」は、蓮池藩士であった永田暉明が明治31年にまとめた蓮池藩の制度を記述した書物である。

この中で、個人的に興味を引いた点を列挙する。

爵位

 蓮池藩主は、代々従五位下朝散大夫の爵位を受け、官名は甲斐守と摂津守を交互に名乗る。

●藩士

 藩士は、親族家老(親類と称する)、家老(上下班あり)、侍(禄高40石で品目を分ける)、手明鑓、徒士(徒行寄合の2種)、足軽(被官組、舸子組、山田党、小道具組)に分かれ、親族家老の陪臣は手明鑓に、家老の陪臣は足軽に準じる。

●政務

 政務は、請役所、用人部、目附部、蔵方部、塩田役所、成章館で行う。

 蔵方部に属する者は勝手方、大坂留守居、物書を除き在職は1年を限り(8月から7月まで)、その才能に応じ再採用する。

●重役

 当役(請役所で藩主を補佐する。家老を充てる。)、元締(蔵方部で財政を担当)、用人(用人部で礼式を担当)、相談人(請役所で当役に告ぐ職掌)、塩田頭人、江戸留守居(用人部に属す)、側大目附、外大目附、勝手方(元締に次ぐ)、請附役(当役の書記)を重役と称し、家老とともに毎月藩主出席の寄合席に出る。

●銭穀出納の職

 侍を近習、外様に分け、近習は銭穀出納の職につかせない。また、禄高40石以下の者は銭穀出納の職につかせない。

●足シ米制

 禄高が40石20石以下の者を重役につけるときは在職中の禄高を40石20石に引き上げる。手明鑓以下の者を諸職の長とするときは侍の格に引き上げる。

●運上

 藩内の河川、酒油の雑種税については、本藩の収入となる。蓮池藩の収入となるのは、吉田村西山陶器、嬉野温泉、河岸芦成、野成、川成、渡船、櫨実、石場、水碓、糀室、諸商買。

●参勤交代

 藩主は隔年3月に参府し、翌年4月に帰国するのを例とする。

●本藩との関係

 領内に幕府の発した禁令の標榜を建てるのは本藩主の名で行う。

 藩主は他藩の者と婚姻できず、婚姻するときは本藩の子弟の名義を付ける。

 本藩の親族家老、三家老(多久、武雄、諫早)は同等に待遇する。ただし、佐賀藩外では陪臣として遇する。

 蓮池藩の家老は本藩の着座と同格。

 蓮池藩の侍のうち、鍋島勝茂の代から従っている者は本藩の侍の末席、それ以後登用された者は本藩の手明鑓の上席。

 蓮池藩の手明鑓は本藩の徒士の上席。蓮池藩の徒士は本藩の足軽に準じる。

 蓮池藩士は、本藩に対し、家中と称する。

 蓮池藩の侍のうち、鍋島勝茂の代から従っている者に切腹を命じるときは本藩に報告する。

 他藩の者を藩士とするときは、本藩に報告する。

 蓮池藩の領民が本藩の領民と刑罰、訴訟に関係するときは、本藩で処分する。

 架橋、水刎等の造築、修繕は本藩に協議を要する。

 点役庄屋は本藩が命じる。

 本藩主の参勤交代のときは、家老1名藩士2名が境原で送迎する。小城藩主、鹿島藩主が参勤交代のときは使者を境原につかわす。