農業を科学する

「学士会会報」882号のから
西友子氏「農業を科学する」
肥料中のどの養分元素と水が、どの時期にどれほどの量が必要とされているかの基本データはほとんどなく、施肥は農業現場に携わる人が経験則で行ってきている。
実は、植物の生育にはどのくらいの水が必要なのかよくわかっていない。私たちは無意識に農業には多くの水が必要と考えている。輸入する作物には生育に大量の水を使っているので、作物と同時にバーチャルな水も多量に輸入しているとよく言われるが、その水の量の科学的根拠はない。植物の中には養分や水を通すパイプは必要だが、パイプの中の水の動きと中を通る養分の動きは別である。水のパイプさえ確保できていれば、養分はその中を通って動くことができるかもしれない。ということは、吸収する水分量が非常に少なくても養分を吸収するような省エネの農業はできるかもしれない。
森義信氏「メルヘンと歴史情報」
西洋のメルヘンには魔法のできる高齢の女性が登場する。寿命が短かった時代には高齢というだけで気味悪がられたり、無用な存在とされたのだと思う。
なかでも森の中に住む高齢の女性は姥捨ての結果と推測できる。
ジャックと豆の木」の主人公はミルクを出さなくなった飼い牛を豆粒と交換するが、この背景にはマメ科の食用植物を植えることによって連作を可能にした農業革命の進行が見てとれる。
眠り姫は15歳の年に紡錘のとげを刺して100年の眠りに就く。彼女を目覚めさせたのは、茨で覆われた城までの道を剣で切り開いた王子だった。「リブラリア法典」というゲルマン法には「自由人女性が奴隷を追慕し、彼女の親族がこれに反対する場合、王または伯は彼女に剣と紡錘とを提示し、この女性が剣を取れば、奴隷を殺害すべく、また紡錘を選べば彼女自身が奴隷身分に陥るべし」という規定があり、眠り姫は紡錘を手に取った結果、長い眠りについたことから、親の決めた結婚に反する行動をとったための報いと解釈できる。
16世紀ドイツの「カロリナ刑法典」に性犯罪者に科せられた腸引出刑と溺殺刑の規定があり、「赤ずきん」の最後で狼が腹を切り裂かれ赤ずきんが引き出された後石を詰められ溺死するエンデイングはこれと合致する。