香港、広州に関するメモ

2001年夏に香港及び広州(日帰り)に11日間滞在した。マカオに行きたかったが台風で行けなかった。
はじめての滞在であり、何かととまどったところもあった。
次の機会のための覚えとしてメモをしておく。

空港
香港の空港はランタオ島の北に位置する。香港の市街の西に位置するため、日本や台湾から向かう場合、着陸直前に市街を見おろすことになる。
狭い海峡に多くの船が行き交う独特の景観が香港であることをすぐに知らしめた。
台北で乗りかえたが、台北の中正空港(英語の案内では蒋介石空港とそのものずばり伝えていた。)が古く、待合室が無駄に天井の高い殺風景な、ここも中国だなと思わせるつくりだったのに対し、香港の空港は3年前にできただけあって新しく、また、極めて大きな空港であるにもかかわらず、つくりがシンプルで空港到着から入国あるいはチエックインから出国までワンフロアで行える慣れぬ旅行者にもわかりやすい空港であった。
一部の搭乗口へは地下を走るシャトルトレインで行くことになる。乗り物天国の香港にまた名物ができた。
将来の需要増に応えてのものなのかどうか、かなりの便数が発着しているにもかかわらず、混雑を感じなかった。
ひっきりなしに発着する飛行機の行き先を見ていると、日本は意外に少ないように見え、中国本土その他アジア各地に向かう飛行機の多いことに驚いた。
便数を数えたわけでもないし、飛行機の大きさもあることから、全くの印象にすぎないが、香港の観光地で、多数の本土、台湾からの団体客がいたこと、店員は、日本語よりも普通話の話し手のほうがはるかに多いと思われることなどと合わせ、日本が気づかぬうちに、日本以外の東アジアのネットワークができあがっているのではないかと思った。

機場快線
空港の中に市内へ向かう鉄道がある。入国後の税関を抜けると正面にホームドアがあって、乗ることができる。
改札口らしきものがないため、私はそこが空港の出口かと錯覚したところ、列車が入ってきたのには驚いた。
切符は自動販売機で90ドルの片道切符が買える。プリペイドカードのオクトパスカードは自動販売機の手前の、機場快線の案内所で150ドルで購入できる。私はここで購入し、オクトパスカードで乗車したが、オクトパスカードを売っている旨の表示がなかったので、「どこで買えるのか?」と聞いたところ、「ここだ」と答えたところだった。
なお、更に手前の両替所の前にツーリスト用のオクトパスカードの自動販売機があり、両替の際には、窓口の担当者に当該カードを買わないか(窓口でも売っている)と問われたが、機場快線の往復が義務付けられるなど自由が利かないので、購入しなかった。
一般のオクトパスカードでも機場快線の往復はできるのだから、ツーリスト用を購入する必要はない。
機場快線は空港を出た後、青衣、九龍(広東語ではカオロンと言っているように聞こえた。)、に途中停車する。
車内は静かでしかも高速、ピッチも十分広い、すばらしいものだった。車内放送は、広東語、英語、普通話の順。
しかしながら、営業距離30km程度の列車に90ドルというのは高い。
機場快線と平行して、ただし、空港には直接乗り入れのない、地下鉄東涌線は運賃が3分の1程度(ただし乗り換えのバス代が必要)であるためか、航空会社勤務とおぼしき乗客を東涌線の車内ではしばしば見かけた。交通費節約であろうか。

機場快線九龍駅
東涌線九龍駅でもあるが、両者は改札口、ホームとも全く別。
駅で飛行機のチエックインができ、駅構内には商店街もあるが、てんで客はいない。はしの方はテナントがはいっていない。
九龍半島の西側にあり、地図では町の中にあるように思われたが、実際は周辺は埋立地で、建設中のビル等ばかりであり、おまけに、出口入口が海側にあるため、どこから出てよいものかわからなかった。駅から歩いて目的地に行くことは想定していないものと思われる。
私は、機場快線利用者専用の主要ホテルを巡回する無料バスに乗った。案内板にはオクトパスカードか航空券を提示とあったがノーチエック。
私が、このバスの存在を知らずに、意識して捜さなかったからか、バス乗り場(列車の改札口から降りることになる)の案内がわかりくかったような気がした。

ビクトリアピーク
昼と夜2回行った。九龍のホテルに泊まったので、スターフエリー、ピークトラム駅までの連絡バス(オープントップ)、ピークトラムのルートと、スターフエリー、ビクトリアピークまでの路線バスの2つの方法を取った。
バスはいずれもオクトパスカードが使えた。スターフエリー乗り場前のバスターミナルから出る。他は使えない。
九龍のフエリー乗り場周辺は海に面したプロムナードになっていて、対岸の眺めは一見の価値がある。また、スターフエリーに乗って、それが次第に近づいていく光景は香港に来たことを実感させるものであった。
ピークトラムに乗る前の対岸の眺めが予想以上に印象深いものであったためか、ビクトリアピークからの眺めはこんなものかという印象であった。
ビクトリアピークといっても、有名な展望台のあるところは鞍部にあたり、周辺及び展望台の上のほうまで住宅が建ち並んでいる。
このことは、路線バスに乗ってみるとよくわかる。
また、香港島北側の高層ビル群の眺めは良く知られているが、ここからは、南側のアバデイーンの町並みや海も眺められることを行ってみてはじめて知った。昼間はこちらの広々とした景色も捨てがたい。
300m程度の高さということだが、風が涼しい。下界の強烈な冷房と自動車の排気ガスからはなれて、自然の涼風を味わえる。
香港島の北岸南岸ともに見られる遊歩道が2800m整備されており、緑の中を散歩、ジョギングする人がいた。快適な道である。
ここを歩く人は西洋人が多かった。

ピークトラム
往復30ドル、片道20ドル。麓ではカード式のチケットがカウンターで購入できる。
頂上では、片道切符を購入したが、切符の購入場所の表示はない。トラムのある建物の総合案内所的なカウンターではなく、トラムに乗るところ(下りの切符をチエックする)で20ドル出すとレシートをくれて通してくれる。
途中駅があったが、あそこで乗降するためにはどうすればよいのか、運賃はどうなるのか不明である。

スターフエリー
九龍中環間は1等2.2ドル、2等1.7ドル。九龍湾仔間は2.2ドル。
レトロな雰囲気と周辺の景色が相俟って印象深い。何度も乗った。
つり銭がある場合、職員がいるブースに金を出すことになる(他はバスの運賃支払箱のようなものに金を入れる、職員が見ているが、つり銭は出してくれない)が、九龍中環間2等のブースは18時に閉まった。(他は不知)
九龍香港間(九龍地区の道路標識には「香港」という表示がある。これは香港島をさしており、どうやら、九龍は香港ではないらしい。)
渡船には他に九竜城から北角へのファーストバスの渡船に乗った。こちらは5ドルだったが、更にレトロなというか寂れたひなびた雰囲気と10分以上ビル群を見ていられるお得感がある。スターフエリーに比べ圧倒的に乗降客も少ない。

 

地下鉄
地下鉄全線でオクトパスカードが使える。そのため、各駅間の運賃がどれくらいだったかの記憶がない。
オクトパスカードを使うと、降りるときに改札口(すべて自動)で乗車に要した運賃の額と残りの金額が表示される。
カードは150ドルで購入する。例えば、97ドル分既に使用し、次に7ドル区間の地下鉄を利用したときは、改札口を出るときに残り金額はー4ドルと表示される。50ドルはデポジットである。そして、そのまま、更に地下鉄を利用するため、改札口を通ろうとすると通れない。この場合、自動販売機横にあるカードの増儲機に金を入れ、カードの使用可能額を増やす必要がある。
ただし、この機械は100ドルか50ドル札しか使えない。
なお、オクトパスカードが不要になった場合は、各駅のカウンターでデポジット分も含め、残り金額が返金される。

 

路線バス 
路線バスもオクトパスカードが使える。バスは各方面に頻発しており極めて便利。香港は狭い町なので少々違った路線に乗っても、帰れなくなったということはないように思われる。
2階建てバスの先頭で、まじかに派手なネオンサインを見ながら移動するのは、おもしろかった。
バスによっては、テレビがついているものもあり、チャイニーズポップスを聞きながら、ネーザンロードのネオンを見るため、バスで縦断した。
バス停の停留所名が小さくわかりにくい。この点は北京や上海のほうがよい。バスによっては、次のバス停を電光掲示板に示すものもあった。

トラム
香港島北岸を横断する二階建て市内電車。オクトパスカードは使えない(現在は使えるらしい。2002年8月修正)2ドル均一。冷房なし。
後乗り前降りで降りるときに2ドル支払うことになる。乗るところがハンドルを回して一人ずつ乗るようになっているが、非常に間隔が狭く、乗りにくい。あれは何か意味があるのだろうか?
他に例を見ない2階建て市内電車であり、それだけでも乗る価値があると思われる。

九広鉄路
香港と広州東を結ぶ鉄道。香港のターミナルは紅磡で名称統一しているようである。ただし、中国本土では九龍と呼んでいる。
九龍広州東間は174km、1日に7便の直通列車が出ている。(全席指定。うち1便は筆慶行き。)
運賃は1等190ドル、特等270ドル(便によっては特等のみ)。発車10分前まで切符を販売している。また、それぞれの駅で出入国審査を行っており、九龍発の場合は九龍で出国、広州東で入国審査を行う。
私は広州東まで1等に乗ったが、ミネラルウオーターのサービスがあった。
広州東駅までは1時間42分、深圳まで山を延々と登るにもかかわらず表定速度100kmを超える俊足である。
中国でも最高水準の列車だと思われる。(運賃も破格に高い。)
中国本土にはいると珠江デルタの赤土に水田、椰子やバナナの木、溜池や豚舎が続き、亜熱帯の地方であることが如実にわかる。
二期作であろうか、すでに稲刈りが終了していた。また、バナナと水田が隣り合わせてある風景は稲が熱帯の作物であることを再認識させられる。
広州東からの帰りは深圳までの列車に乗り、そこで乗り換え、歩いて出国審査、入国審査を経て、羅湖から九龍までの列車に乗った。羅湖まではたいした距離ではない(数百メートルか?)が、出入国審査があることと、歩けないほどの人数の群集が出境するため、深圳で降りて羅湖で乗るまで2時間近くを要した。
広州東から深圳まで139km。頻繁に出発している。運賃は便により異なるが、私が乗った869次は75元、所要時間は1時間5分の俊足である。
九龍までの直通列車に比べると落ちるものの、4人がけのボックスシートの快適な列車である。
乗客は大部分軽装で、熊本から博多に遊びに行ったという風の若者もおり、中国の鉄道乗客に対するイメージとは異なる客層に見えた。
切符は広州東駅の深圳行き専用売場で買える(全席指定)が、タッチパネル式の自動販売機もある。自動販売機の方が利用者が少ないので簡単に購入できる。
羅湖は中国本土出国の専用駅であるが、ここから九龍までは各駅停車の郊外電車が頻発している。これにはオクトパスカードも使える。
この電車に乗ると香港がいかに山がちなところであるかが認識できる。
ターミナルの紅磡駅では広州行きとは別のホーム、市街地側に止まる。逆に広州行きは、町に背を向けて海側に向いているため、町の方からはどうはいればいいのか歩いていくと非常にわかりにくい。周辺を歩いて見たが、どういうコースをたどればよいのか理解できなかった。私は香港体育館の前庭を突っ切って行った。

 

広州
広州には広州駅と広州東駅があるが、香港からの直行便は広州東駅のみに停車するし、深圳行きの便数も広州東駅が多い。(広州駅始発の便は広州東駅に停車する。)
また、広州東駅には中心部に向かう地下鉄が通っていて、博多駅のようにコンコースから直接地下に降りられるようになっている。
そのため、こと、香港方面については、広州東駅が表玄関だが、九龍の明るい近代的な雰囲気に比べると駅は薄暗く、無数の人がうごめいている、北京駅や上海駅と同じ匂いのする、よくも悪くも中国の駅だなという印象があった。
また、町並みは、華南地方独特の建物が歩道の上を覆う亭仔脚の通りが目立つが、その混沌とした有様は近くの香港よりも遠い北京や上海を髣髴とさせるものだった。香港もずいぶん混沌としているように見えるが、やはり中国本土の諸都市と比べると随分秩序だっているように見える。それに、町中で何をすることもなくぼうっとしている人が香港には少ないように見えた。
広州の地下鉄は香港と同様のものが走っており、改札は自動改札である。私は利用しなかったが、改札機に直接挿入するプリペイドカードもある。
バスは二階建てバスはない。また、トロリーバスも含めワンマンバスになっている。運賃は1元均一。
昼食は清平市場で、名物という鶏肉を煮たものを白米にかけた清平鶏飯なるものを食べた。8元だった。
香港と同様に広州にも果物のジューススタンドがあったが、香港で5ドルで売っていたココナッツジュースが、広州では2元であった。(ドルと元はほぼ等価)
清平市場と大通りを隔てて、珠江に接するのが、広州一の観光地と思われる、かつての開港場、沙面である。出島と同じように掘割で区切られており、沙面の区域は、まわりの喧騒から離れて、往時の建物が建ち並ぶ緑あふれた涼やかな公園だった。しかしながら、ここは、公園に特化しておらず、一般の住民も住んでいる。それゆえか入場料はいらない。
なお、沙面の最寄の地下鉄駅とは大きな通りをへだてているが、駅からここを渡るところがない。いかにも中国らしいといえば中国らしい。

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