柔構造

坂野潤治氏大野健一氏「明治維新1858−1881」(講談社 2010年)では明治維新について第二次大戦後の東アジアで成立した開発独裁とは異なる政治構造、「柔構造」を持っていたと説く。明治維新の前後を通じて複数の国家目標(幕末期には「富国強兵」「公議輿論」、維新期には「富国」「強兵」「憲法」「議会」)を追求するもそれ単独では十分な政治力を得られず、他のグループとの協力関係を築くことによって自己の政策を実現しようとした。そこでは「国家目標」「合従連衡」「指導者」という3つのレベルの可変性、柔軟性が顕著で状況に応じて変わっていき、そうした「柔構造」は複数目標を同時に達成する能力、内外ショックへの適応力、政権の持続性のいずれにおいても強靭だったとされる。