インドネシアではジャスミン茶が一般的

「学士会会報」880号による知識


牧原出氏「民主党政権の「大臣政治」と「財務省支配」」
イギリスでは第一次世界大戦後に現代的な二大政党制が登場する過程で、幹部公務員の省を越えた任用が進み、公務員集団の一体化が強化された。


葛西敬之氏「高速鉄道システムの海外輸出について」
東海道新幹線の列車がすべて16両編成で長さ400メートルに対し、フランスのTGV、ドイツのICEはいずれも10両編成200メートルを編成の固定的単位としている。
1列車200メートルあたりの座席数はN700−Iで640席、TGVは360席、ICEは410席であり、しかも一座席当たりの面積、座席間隔ともにN700−Iが大きい。これはTGV、ICEが機関車による動力集中方式を採っており、その分旅客座席空間が狭められるからである。


山西貞氏「お茶を讃える」
インドネシアではジャスミン茶が一般的だが中国産に比べると香味が劣り砂糖を加えたりしている。


唐木英明氏「食品不安の時代」
人間の直観的判断は「危険情報」と「利益情報」を重視し、「安全情報」は聞き逃しても実害がないため軽視する。これが世の中に危険情報が氾濫し、情報のバイアスが起こる原因である。
「人は理性でなく、ヒューリスティク(感性・直感・本能)で判断する」→「ヒューリスティクは危険情報を重視する」→「人は悪いことに過剰反応する」→「危険情報は売れる・ショッキングな見出しは売れる」→「危険情報が氾濫する」→「不安増大」→「モラルパニック・集団ヒステリーが起こる」
という流れで風評被害が発生する。
中国食品の違反率は他国からの輸入食品と比べむしろ少ない。
食品の違反は2001年以降毎年減少している。
国産の食品と輸入食品の違反率は変わらない。違反の程度も変わらない。
冷凍餃子事件後、消費者団体、政治家、メデイアが「中国製は怖いから検査しろ」と大合唱を始め、その結果中国食品の検査件数が激増した。こうして中国製品だけ集中して調べたことにより、中国製から見つかる違反件数も多くなり、これを報道が「また違反」と取り上げたことからヒューリスティクの判断は「中国製品はあぶない」と判断した。
検査件数を増やせば国産食品でも中国食品と同じように違反件数が増えることは理解せず、違反は中国食品だけと誤解した。典型的風評被害である。
食品安全委員会の調査で残留農薬について9割の人が「不安」と答えているが、もし9割の人が農薬を怖いと思うなら、9割の人が無農薬野菜を買うはずだが、日本に流通する無農薬野菜は1%以下である。
消費者団体は「量が少ないから買えない。あっても高いから買えない」と言うが、本当に需要があれば「もっと増やしてほしい」という声があがるはずだがそういう動きはない。つまり、調査の結果と実際の消費行動は一致していない。
買うか買わないかを決めるのは価格と品質の総合的判断で、危険という情報は判断材料の一つにすぎない。
しかし、アンケート調査では「残留農薬食品添加物が怖い」という知識を持っていることを示すために「不安」にマルをつける。これが「聴かれて出てくる不安」である。
冷凍餃子事件以降、中国食品の輸入量は激減した。これは大手小売業が「消費者はたぶん中国食品がきらいだろう。こわいだろう。それなら中国食品は扱わない」と消費者ニーズを先取りしたからである。
ところが、消費者からは「家計が厳しいので安い中国産を買いたいのに、高い国産しかない」と不満の声があがった。
高度経済成長以降、加工食品、輸入食品、外食の時代になり、食品のリスク管理は消費者から事業者が行うこととなって、今まではできなかった「食品は絶対に安全でなければならないと嫌だ」と要求ができる時代になった。そうした中で違反事例が出てくることで消費者は不安を感じた。
ヒューリスティクな判断による誤解からも不安が生まれる。冷凍餃子事件以後6000人近い人が冷凍餃子による中毒症状を訴えたが実際にそうだったのは最初の10人だけだった。
リスクゼロという達成不可能な安全を求めた結果、不信感と相俟って不安が生まれた。
植物は昆虫などから身を守るために、発がん性のある化学物質を含んでおり、それを抑制する化学物質もはいっている。
アメリカ人は毎日平均1.5グラムの天然化学物質を食べていて、この量は残留農薬基準の1万倍にあたる。すなわち無農薬野菜とは0.01%の残留農薬をゼロにして、99.9%の天然の農薬成分はそのまま残しているものを呼んでいる。
人間は直感で判断するが、直感の背景には知識と経験がある。直感的な判断を「正しい判断」にするためには、いろいろな知識と豊かな経験が必要である。


佐々木敏氏「世の中が求める「人間栄養学」の専門職業人をどのように育てるか」
夏になると「夏バテに豚肉料理」という記事が出るが、豚肉を食べることによりどれぐらいエネルギーが有効活用されるかを示した研究成果を知らない。
栄養系の大学は、薬学系、看護系と比べても私立大学、女子大学に偏在しており、入学試験の偏差値は低い。
公衆衛生学に関する大学院は東京大学京都大学にしかない。


中川恵一氏「がんのひみつ」
アメリカでは3人に2人、ドイツでは6割が受けているがんの放射線治療は日本では25%しか受けていない。
欧米や韓国、台湾ではがんの疑いがあるとまず内科に行き、抗がん剤専門の内科医である腫瘍内科医に診断してもらう。日本ではすべて外科の範疇で東大病院にも腫瘍内科医はいない。


藤森輝信氏「東大・本郷キャンパス御殿下グランド擁壁」
御殿下グランド擁壁は明治21年6月に完成した工科大学の校舎の一部で、日本の大学に残る辰野金吾唯一の作品である。