小規模自治体で現物給付による医療費助成が困難な理由

現物給付による医療費の助成とは、診療を受けた患者がそれに係る費用を医療機関にいったん支払う必要のないよう、助成を行う者が医療機関に対し、患者が支払うべき費用に相当する額を直接支払う、すなわち、当該患者に対しては金銭という形ではなく医療というサービスそのものを提供することである。
小規模な地方公共団体が現物給付による医療費の助成を行うためには、医療機関に、健康保険の請求とは別にその団体の住民に係るレセプトを作成し、審査支払機関又は当該団体に直接送付してもらう必要がある。
また、医療機関への受診は、一般に、その団体が小規模になればなるほど、団体の区域を越えて行われることとなるから、小規模な団体は多くの区域外の医療機関の協力も得る必要がある。
一方、医療機関の受診者は、多くの地方公共団体にまたがっているのが通例であり、特定の団体の住民についてのみ別途レセプトを作成する等の異なる事務処理を行うのは煩雑であり、金銭的にも医療機関の負担増を招くこととなる。
審査支払機関にとっても、特定の地方公共団体のためにコンピューターソフト等の新規投資を行わなければならないなど、金銭的事務的負担が大きい。
そのため、地方公共団体が現物給付による助成を開始するためには、その団体の規模が大きく、医療機関や審査支払機関にとっても一定の需要が見込め、事務処理に関してスケールメリットがあるか、または、医療機関(区域外にあるものを含む)や審査支払機関に生じる事務処理費用を当該団体が肩代わりする必要があり、そのため、地方公共団体が小規模になればなるほど、現物給付による助成を行うための条件は厳しいものとなる。