申城上海 水城蘇州

伊良部島の酒「豊年」を寿司を食いながら飲む。泡盛のさわやかなのどごしはすしに良く合う。泡盛は何をつまみに飲んでもうまい。




申城とは、上海の古称である。上海市内から郊外へのバス路線などには「申○線」などという表示があり、現在でも上海を表す人口に膾炙したことばである。「米欧回覧実記」にも、黄浦江の別名を申江というとの記述がある。また、蘇州が水の都と呼ばれているのは周知のことと思われる。
2002年8月24日から8月30日まで上海と蘇州(日帰り)に行った。
上海は、これまで、3度行ったが、ゆっくり、町をあるくことがなかった。蘇州ははじめてだった。後日のための備忘を作成する。

虹橋空港
数年前に浦東に新空港ができたため、国際線は日本や香港、韓国行きの一部の便が虹橋空港発着となった。(2002年10月から国際線はすべて浦東空港発着となった。)
こじんまりとした空港で市内へも近い。タクシー乗り場は混んでおり、白タクとおぼしき輩が多くうざい。
市内へのバスは、前の広場に専用の乗り場が設営されてある民航バスが場所がわかりやすいが、上海駅や南京路方面には便がない。
これらの方面は、国際線ターミナルの建物に沿って、国内線ターミナルの反対側に向かうと、5分ぐらいでバス停がある。ここも虹橋機場というバス停の名称にはなっているが、場所はわかりにくい。なお、空港行きの場合は便によっては、ターミナルの前を経由して降ろしてくれる。
人民広場行きが925路、上海駅行きが941路で、都心へはこれらの便で行ける。終点までの運賃はともに4元。所要時間は朝でも1時間みとけばいいだろうか。ただし、これらは、空港と市内を結ぶリムジンバス的なものではなく、市内バスの起終点がたまたま空港であると考えた方がよく、乗客は停留所ごとにひんぱんに入れ替わり、通勤時間帯は猛烈に混む。私が上海駅から乗ったときには、生きた鶏を二羽持って乗ってきた人もいた。

バス、鉄道
バス運賃は、上海市内はおおむね、冷房なしが1元、冷房つきが2元。蘇州では冷房つきをみることがなく、すべて1元。
中国のバス名物の、車掌から遠く離れた乗客との間の乗客間で行う、金銭と切符の受け渡しリレーにはじめて参加することができた。
超満員のバスの中で、小さな子が小便を漏らしたところ、車掌がどこからかモップを持ち出し、たまった小便を引き延ばす作業を行ったが、その間、何かとうるさい乗客が、このことについて、特段の反応がなかった。車掌もアーイーヤーと言いながらもあわてず騒がず。こんなおおらかさが、中国を歩いて肩がこらない理由であろうか。
たまたま乗ったバスの隣席の女性は就職面接に向かうものと思われ、ワープロ打ちの履歴書を持っていた。
特段の書式はなく、●を付した項目ごとに必要な事項が記載されており、その中にはメールアドレスもあった。
鉄道は、明珠線にはじめて乗った。地元では軽軌と呼ばれている6両編成の高架鉄道で、これまで、このような鉄道がなかった上海の町の景観が随分変わったように思われる。高速道路と平行して走る区間が長く、東京や大阪のような景観が上海でも見られる。
明珠線は地下鉄とは接続していない。上海駅や中山公園駅で乗り換えることができることになっているが、かなりの距離を歩くことになる。連絡切符はない。また、切符はすべて手売りで自動改札機も導入されていない。

朱家角
上海体育場横にある、観光バスターミナルから朱家角に行った。所要時間は1時間30分といったところ。朱家角には、路線バスも人民広場から頻発しているが、あえて、観光バスターミナルから旅遊4線という路線を利用した。
観光バスのターミナルの最寄駅は上海体育館駅であるが、駅が体育館の脇にあるのに対し、バスターミナルは体育館に隣接したスタジアムの5号門にあり、駅からは10分ほど歩く。
朱家角の有料施設の入場料が込みになった套票(66元)を買ったら、帰りに乗るバスの時刻を指定され、ミネラルウオーターをくれた。指定どおりのバスに乗って帰ったが、他の便に乗ったらどうなるのだろうか?なお、特段、套票を購入する必要はなく、路線バスと同様にバスの車内で車掌から切符を買うこともできる。
朱家角は、地元のガイドブックでは、明清時代の江南の水郷の町並みを残すところだそうで、柳川が好きな人は気に入るのではないか。
自動車のはいらない静かな道、掘割りに沿った古い家並みは風情がある。豚足やちまきが名物らしい。また、道ばたでさとうきびを売っていた。
ここで、私ははじめて、使用後の馬桶を見た。馬桶の中身をリヤカーに積んだ箱の中に流し込んでいた。
昼食は、ここの最大の名所である秀麗な石橋、放生橋のたもとの食堂で、名物料理という、煮た川魚を黒酢と生姜と砂糖で味付けしたもの(糖醋魚塊)と菱の実とグリーンピースの煮物、それにビール2本と米飯を摂った。魚がうまかった。43元かかった。
伝票は「朱家角飲食商店差旅費報銷単」という出張旅費の精算伝票用紙の白紙の裏面に、鉛筆で料理名と値段を書いたもので、「糖」のつくりが“まだれ”のみ、「酒」のつくりが“九”というふうに俗字が書かれていた。

 

蘇州
蘇州へは、汽車で往復した。蘇州行きの切符は上海駅西の龍門賓館のロビー奥にある外国人向けの切符売場で買った。
龍門賓館の周囲に切符売場がある旨の表示は見つけられなかった。
外国人向けとはいっても、英語は通じていなかったようである。客が少ないのでゆっくり購入できるメリットはある。ここで切符を購入すると、運賃の他に手数料5元が必要である。
上海行きの切符は蘇州駅東の別棟の切符売場で買った。古色蒼然としたうすぐらい建物の中に多くの人がならんでいる。ここに掲示されてある時刻表には上海は瀘(の簡体字)と表示されている。上海の別称で自動車のナンバーにも付されており、誰でも知っていることなのであろう。
上海蘇州間の運賃は特快が15元、快が13元、所要時間は特快が40分、快がその倍ぐらい、気楽な旅行ができる。私が乗ったときも家族連れや学生のグループがたくさん乗っていた。
蘇州に向かうときは、南京西行きの特快に乗ったが、龍井茶のテイーバッグを紙コップで3元で売っていた。紙コップには、この列車に常備されているとの旨の正露丸の広告が印刷されていた。
蘇州駅は、待合室が2つある。列車の発車時刻が近づくと、待合室の指定された改札口が開けられる中国流のやり方(かつては日本の駅もそうであったが)だが、蘇州駅の場合、指定された改札口ではないところからも、待合室からホームに出ようと思えば出られる構造になっている。特に、出入りを禁じた表示はない。
改札口には、柵や椅子を乗り越えたりする者から罰金を取る役目のおばさんがおり、上記のような者も呼び止めて罰金をとっていたようであるが、恣意にまかせたやり方のようだったし、そもそも、そのようなわかりにくい構造にしている理由がわからなかった。
蘇州駅の東側にはバスターミナルがある。蘇州駅は蘇州の町を囲む運河の北側に位置し、中心街へは運河を渡っていくことになる。バスターミナルのある場所はかつて、運河を行く旅客船のターミナルだったという。
水の都蘇州とはいえ、大きな近代都市であり、町じゅう掘割りというわけではない。しかし、町のそこここに橋がかかって、古い町並みが残っている。
歩いたり、バスの中から見た印象では、町並みや道路が、上海よりも比較的すっきりときれいな感じがした。上海と比べて見上げる空が広く、黒瓦の古い家並みは歩いていても快適であった。
大通りや観光地近くで、ジャスミンの花の腕輪の立ち売りがいる。歩いているとジャスミンの香りが漂ってくる。
また、ヨーグルトの陶器の容器に入れて、男たちがこおろぎを道端で売っていた。 
拙政園近くの小食堂で昼食を摂った。揚州炒飯と洗面器のような器にはいった玉子と青菜のスープにビール1本、そして、めずらしく注文しないのに、急須に茶がでた。しめて18元。茶代はなし。うまかった。ビールがぬるかったのが残念。隣の席の常連とおぼしき客は、米飯と野菜炒めと大きなトマトスープを食べていた。
北塔の下で龍井茶を飲んだ。10元だった。場所代と思えばよい。大きなポットを置かれ、好きなだけ飲める。
拙政園は大きな、美しい庭園である。前日に強風があり、木が倒れたりして歩きにくいところがあるから注意されたいという掲示が入口にあったが、これが見事な達筆の毛筆によるもので、中国文化の奥は深い。入場料40元。近くの獅子林は15元。

小籠包 湖水亭
豫園商場の南翔饅頭店の小籠包は上海名物であり、いつ行っても行列ができている。地元のガイドブックを見ても、ここ自体が観光地となっているこの店が南京路と西蔵路の交差点にある新世界デパートのフードコートに出店している。豫園商場より若干高めのようだが、一番高い蟹肉小籠でも6個18元である。うまかった。
豫園商場の中の湖心亭では龍井茶臭豆腐の干物で66元かかった。これにおみやげと称して扇子がつく。私としては扇子などいらんからもう少し安くならないのかと思う。

上海動物園
入場料は20元である。もともとゴルフ場だけあって、非常に広く、一回りで疲れてしまう。動物園だけではなく、しょぼい、タイムスリップしたような古い遊戯施設もあるが、利用者は少なく閑散としており、使わなくなって廃墟になった施設も多々あり、上海の子どもたちからも見放されているものと思われる。北京動物園ではパンダは別料金だったが、上海動物園では別料金ではない。
全体的に北京動物園広州動物園に比べ、動物園の施設が疲弊し、うらぶれた雰囲気を感じたのは錯覚であろうか。

浦東
金陵路から5角の渡し舟で行った。浦東からの便は運賃無料。船には座席はない。黄浦江の川風を受けて渡れるが、香港九龍間のフエリーほどの旅情はない。距離も短い。浦東の乗り場周辺は荒涼としている。ここから、東方明珠と金茂大厦へは無料送迎バスがある。歩いても行けるし、実際、私は歩いたが、距離的にも、開発途上の周辺風景の点からも歩いて、あまりいいことはない。
外灘から見ると、超近代的な光景が広がる浦東だが、歩いてみると、未だ開発中との印象は否めない。それでも、4年前の印象とは様変わりだが。
高層ビルができていることよりも、金茂大厦から見おろす浦東の街並み、住宅地の広がりの方に驚いた。古い上海の町とはまるで違う、郊外型の家並みが遠くまで連なっている。テレビでも、このあたりの家のコマーシャルを随分やっていた。
金茂大厦から見ると、浦東の両側を黄浦江がはさみこみように流れている。陸家嘴という地名がよく特長を示している。
また、このビルの展望台からは、ビルの中のホテルの吹き抜けのらせん状に見える部屋の連なりが見える。一見の価値がある。
浦東からは、観光用のトンネルを通った。30元の破格の価格。トンネルの中がイルミネーションで飾られている。その中を数人が乗れる電車(でいいのか?)で通る。

町並み
4年ぶりの上海だったが、その変貌はすさまじい。どこもかしこも、再開発で里弄がなくなり、高層ビルが建ち、道路が広がり、大きな緑地帯ができている。交通マナーも以前の混沌とした状態とは様変わりである。交通ルールを守らないと収拾がつかないほど自動車が増えたということであろう。
ただ、大きな道路に自動車が大量に走る町並みは騒音と空気の悪さを強く感じる。道路拡幅等がまだされていない、山陰路や新華路などのプラタナスの美しい並木道が貴重に思える。
上海は、その構造から、静かな胡同のある北京や山のある香港のように、町を歩いていて、喧騒から逃げられる場所が少ないだけに、どこに行っても、自動車が追いかけてくるうるさい町、散策しにくい町になっていっているようである。 とはいえ、帰ってくると、あれが懐かしいのだが。 
本屋では、日本人作家の作品もたくさん売ってある。定番の夏目漱石川端康成らとならび、村上春樹渡辺淳一などがあるが、驚いたのは、小さな書店にも、江戸川乱歩の作品が取り揃えてあることである。孤島の鬼、影男から少年探偵団まで揃っている。上海市内だけではなく、朱家角にもあった。
上海駅前のデパートのレコード屋では、テレサ・テンのCDが12元で売られている横に、マックスベストアルバムが65元で売られていた。
人民広場南の博物館の東の公衆便所は下が男用、上が女用で利用料1元と破格の値段であった。また、乍浦美食街のトイレ公衆便所は5角だった。トイレといえば、男の小便のみは無料という公衆便所が多かったのは新鮮な印象だった。

テレビ
蘇州で、退役軍人病院とかいうところの注射豊乳というコマーシャルを見た。上海でも整形手術のコマーシャルを見た。日本のそれのように妙なイメージ広告ではなく、その効能をストレートに知らせるもので、これはこれでいさぎよい。
ホテルのテレビで見た湖南省長沙の放送局のニュースでは、戦争映画風の音楽とともに、各地の洪水の最前線に立つ党幹部の雄姿の報道や、両親が洪水対応で家をあけているなか、農作業や家事をひとりでがんばる少女のレポートなどがあり、エンターテインメント風の構成だった。
コマーシャルにおいて、いったいに、有名芸能人と思われる人物が出てくるものが増えたような気がする。
京劇専門チャンネルというのがある。素人が京劇の一節を歌うのどじまんのような番組もあった。
料理の鉄人」や「紅白歌合戦」(赤と青の対決となっていたスタジオ収録のしょぼい番組、最後は「蛍の光」の合唱)のパクリもあった。「料理の鉄人」は、邯鄲と西安の中華料理の対決であり、さすがに他の料理のはいるすきはないようである。
男はつらいよ」の中国語吹き替え版の、渥美清太宰久雄は声がそっくりだった。
日本でもよくある、小さな親切をしましょう風のコマーシャルで、蓋がとれたマンホールをもとにもどすというものがあった。(アニメ)